ボルトンでもやっぱり1人ぼっちの世界の中田w

原田公樹(スポーツyeah!)

最後の最後まで身勝手な男だった。半年前から決めていたというなら、なぜそれを
事前に公表しなかったのだろうか。中田ヒデクラスになら社会的な責任というものが
あるはずだ。ブラジル戦のあと、一人で泣いたりして、格好悪すぎる。もし、引退を明
らかにしていたら、ほかの選手たちと、もう少し上手くやれたはずだ。

ボルトンでもひとりでいることが多く、いつも寂しそうだった。でもチームメイトとまじわ
ろうという努力はほとんどしなかった。ボルトンの広報が、記者の取材に応じるように
機会を作っても、いつも固く断っていた。たくさんの人と付き合うのが苦手で、ごく限ら
れた人としか付き合えないタイプなのはわかる。でもサッカーはチームスポーツで、
プロサッカーはメディアとの連動がなければ存在できない。

ボルトンの戦術にも最後まで馴染もうとしなかった。確かにアラダイス監督のサッカー
は特殊で、ヒデの得意とするプレーが生かされるような戦術ではなかったが、最善を
尽くすのが、プロ選手というものだ。ヒデは未完成なのに、早くに自分を分厚い殻で
囲ってしまい、気に入ったものしか受け付けなくなった。

もっとも、外部との接触を避け、殻の中で血のにじむ努力をしたから、イタリアではあ
る程度、成功したのだろう。でも、パルマのころ壁にぶつかり、その後ずっともがいて
いるように見えた。いつかそれを越えようとするとき、ヒデは殻から出てくる、と待って
いた。でも突然、殻ごと消えた。

いつも人とは変わったことがしたいヒデのことだ。きっとジェームス・ディーンのような
伝説になりたかったのだろう。日本のメディアはヒデの突然の引退をあまりにも美化
しすぎではないか。川淵キャプテンですら「ヒデらしい鮮やかな決断だ」というのだか
ら。この様子ならヒデのシナリオ通りに事は運びそうだ。

でも僕にはただの格好つけが、途中で逃げ出したようにしか見えない。